サウナでぴちゃぴちゃ音を立てる奴って何なの?

「ふう~。ぴちゃぴちゃぴちゃ、、」。ふう~じゃないだろう。本当に何なんだろう?温泉ほど無防備になる場所もなく、だからこそルールは大切にするべきであり、大きく注意書きをしてほしいのものである。「ぴちゃぴちゃ音を立てないでください!!」と、、。



「黙浴」。
最近よく目にする言葉であり、久しぶりに「いい言葉だなぁ」と入る前からフレッシュな気持ちになることができる。温泉に来る動機はさまざまあるだろうが、本来の目的は心身の不純物を落とすことであって、それ以外の動作・音は全て不純物であり、黙浴とは「いいから黙って入浴してなさい」というメッセージなのだろう。そんな母親の厳しい教えを受けた子供たちも父親と二人きりになると解放された気分になるようで脱衣所の段階でコサックダンスを踊っていた。


ちっ。何だこのガキは?オレのエリアに入ってくんじゃねーよ。
父親は何やってんだよ?何でオマエまで踊ってんだよ。しかもチョット上手いのがムカつくんだよ。

私は子供は嫌いではないのだが、それはあくまで家や公園で遊んでいる時であって、こういう場合は親子共々プロレス技を喰らわせたくなる。

「んっ、んんっ。ごめんね~。ちょっと避けてくれるかな~」

いいか?最終警告だぞ。
これでこれ以上続けようものならジャイアントスイングで女風呂一直線だぞ。正当防衛で女風呂を覗いてやる、、。

私の怒気を感じ取ったのか父親が注意をし始めた。

「おい!○○!!そんな狭い場所で踊るのはやめろ!ママに言いつけるぞ!」

広さの問題じゃねーんだよ!!お前ら以外にも人がいるんだよ!家じゃねーんだよ。

「はーい。ねぇパパ。コレなんて書いてるの?」

よし。いいのに気付いたな。
その言葉はな、お前らの教典になるべき言葉なんだよ。

「ん?何だろうな?ちんよく?ぜんよく?まぁ気にするな。海水浴みたいなもんだろ」

ばか!全然ちげーよ。調べろよ!今すぐ!Google先生に教えてもらえよ!

「キャホー!!ドボーン!!」

私の願いは通じず、南の島に来たかのようにこの父子は湯ぶねの中を泳ぎまわっていた。




まぁ、たまにはこういう光景も良いだろう。私も子供の頃は所狭しと駆け回り、すっころんで頭を打ち付けながら大人になっていったものである。この父親も責めることはできない。限られた親子の時間は多少の迷惑をかけてでも味わうべきである。私が物申したいのは、温泉を日常的なものにしてしまったボス的な奴らであって、奴らは掛湯の段階からボスのBGMを流し込んでくる。


「バシャバシャ、バッシャッーン!!」

はい出た。海坊主1号。
マジで何なのコイツらの掛湯??汚物まき散らしてるだけだろ。扉開けた時の絶望感がハンパねーんだけど、、。

「ふう~。コンコン。バッシャッーン!!」

わかったって。リズムに乗んなよ。さっさとどけよ。

「パシャパシャ。タッタッタ、ザブン」

つーかオマエ体洗った??


おそらく洗っていない。コイツらはシャワーというものを嫌っており嫌っているというよりその威力を信じておらず、手桶のバッシャッーンが何より最強で、それが全ての汚れを落としてくれると信じ込んでいる。しかも何故かタオルすら持っていないことが多く、「オレは清廉なのだから拭く必要などないだろう」という自信の表れなのだろう。こういう奴は現場を仕切りたがるクセがある。

「お~い!坊ちゃん!!体に泡付いたままだよ!」

「はい。ごめんなさい」

「お父さんもちゃんと注意しないと!あと話し声もうるさいよ」

「はい。気をつけます」

いや、お前の声の方がうるさいから。
お前のバッシャッーンの方が汚いから。
ダメだ、このフロアは。さっさと逃げよう。

本質を解かっていないリーダーがいる現場ほど息苦しい場所もないだろう。私は運が悪かったとあきらめ、今回はサウナだけで済ますことにした。運よくそこには誰もおらず、リラックスした空間を過ごしていたのだが、そこにヒョコっと海坊主が顔を出す。

き、来やがった、、。
ゆでだこが、、。何で来んだよ、、。もう十分だろうがよ。

ジジイはすでに赤くなっており、入り口付近でさっさと出ていくだろうと思っていた私の思惑とは逆に足音が近づいてくる。

ザッザッザ。

おいおい。コレ以上近づいてくんなよ、、。パーソナルスペースってもんがあるだろうがよ。

「よっこらせ」

えぇー!!
隣ィィーー!!
ホント何コイツ??マジで気持ち悪いわ、、。

が、そこは「黙浴」。リアクションを出すことはルール違反であって、体の不純物も出し切れていなかった私はじっと耐えることにした。

「ふう~~。ぶふう~~」

黙ってろジジイ。ぶっ殺すぞ。
温泉を私物化しているテメーが誰よりもルールを守っていない。絶対、係員に報告してやる。
てめーの魂胆はわかっている。オレの今座っている場所がオマエの指定席だったんだろ?
くくく。だったらどかしてみろよ。その前に「タコから」ができあがるだろうよ。


「ハァ~ン、ハァ~ン」

っち。さすがにコレはきついな、、。
この距離で聞くジジイの喘ぎ声は、、。置き換えろ。目を閉じよう。新しい熟女物だコレは。

「ぴちゃ、、」

ぴちゃ??
何だ?空耳か??想像力がバグったか??

「ぴちゃぴちゃぴちゃ」

キモいキモいキモい!!
どっから音出してんの!?男にそんな機能あったっけ!?

さすがにコレには怖いもの見たさに薄っすらと目を開ける。すると

おえっ!!
コイツ自分の腹でギターフリークスやってやがる!!
しかも緩みきった千段腹だから、どこ触っても音が鳴りやがる。何て張りのないキモい音なんだ、、。おえっ。ダメだ。まじで死ぬ、、。

これだけの不協和音を聞いたのは人生で初めてである。だが、ジジイも命懸けだろう。これだけの音を出すには相当の水分を使うはずだ。あと一分もすれば唐揚げが焼きあがるだろう。


「ピッピッ!ぴちゃちゃ、ふぅーふぅー」

やめろぉぉー!!
リズム変えてんじゃねー!!そんなAVは見たことねぇー!!

「ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ」

うおぉぉぉーー!!
死ぬぅぅーー!!

「ぴちゃっ!!バタンっ!」

バタン??
もしかして、、。

そこには力尽きたジジイが横たわっていた。

やった、、。勝った、、。
早く係員を呼んでこよう、、。

 

ボコッ!あっ!

 

限界だった私は拡散したジジイの体液を踏んでしまい、転ぶと同時にジジイにエルボーを喰らわせてしまった。

「あっ!すいませんっ!!違うんです。今のはわざとじゃないんです!!とゆうか全部オマエが悪いんです!!すぐ助けを呼んでくるからお願い、、。死なないで!!」

するとジジイがむくっと起き上がる。

げっ!!
コイツ不死身か、、。

「あんちゃん、、。黙浴だよ、、。バタンっ」

ヒィっ、、。

私は錯乱したまま係員のもとへと走り出す。

「係員さん!!係員さん!!」

「落ち着いてください!!どうしましたか!?」

「サウナで!!サウナで!!」

「サウナで??」




「ぴちゃぴちゃ音を立てないで下さい!!」