脆弱者で行こう

モテない中年のただの日記です

AVレンタルコーディネーター

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの『初めてプロに会った』日」。


スマートフォンでエロを楽しめるようになった昨今、いい時代になったものだなと感慨にふけている中年男性も多いのではないのだろうか?もちろん私もそのうちの一人なのだが、たまに無性にあの「18禁市場」に赴きたくなる。市場には市場のルールがある。戦場での記憶を人々に忘れ去られる前にここに記しておきたい。


まずは大前提に服装。これは絶対に派手になってはならない。これを守れない者は一生自分はモテると勘違いしながら生きていけばいい。別に否定するつもりはないが、私たちの世界にも入って来ないでもらいたい。私の制服は黒系統のジャージ上下で、ビギナーの頃は局部の膨らみを抑えることができずカッチカチのジーンズを着用していたのだが慣れてくるにつれ、どの素材まで耐えられるかを楽しめるようになっており、今では極薄のナイロン素材を好んで着用している。
次に入室の仕方なのだが、これはなるべくゆっくり入った方がいい。何も恥ずかしがって急ぐ必要はなく、18禁と書かれた美しい文字に直前まで見惚れていればいい。私はあの暖簾を手でかき分けること自体が邪道だと思っていて、ピクルに会いに来た時の範馬勇次郎ように顔から入るようにしている。ちなみに暗黙の了解で退出人が優先になっており、かつて私は急いで入ってきたガキと衝突し、「熟女村」というタイトルのAVをお姉さんに拾ってもらったことがある。これが焦らず入室を勧める理由でもある。入室してからも好きにしていいわけではない。皆、本マグロのせりの如く真剣な眼差しをしており、決して視界に入ることをしてはならない。どうしてもその商品がほしいのであれば、退室して待つか、店を変えるかをした方がいい。早く終わんねぇかなオーラを出すのも御法度である。
あと店員さんが商品の補充にきた場合は、どんな理由があろうと即座に場所を譲らなければならない。飯のタネがあってこそ賑わう市場だ。店員に敬意を払うのは当然である。もちろんケータイはマナーモード、私語も厳禁である。

AVレンタルコーディネーターの資格を得るには最低限これくらいの知識は必要である。あとは実務経験が10年以上、、。

さて、次は待ちに待った実践編に行ってみよう!

「レンタル」とは言ったものの、私が好んでいたのは買うことであった。レンタルだと真剣さが失われどうしても衝動借りになってしまい、結局最初の一本しか見なくなることが多い。何より返却しに行くのが面倒なので、それなら命懸けでネタを仕入れようというのが私の出した結論であった。「買う」ことに関してはレンタル店より断然リサイクル店の方が品ぞろいは豊富で、特に小型リサイクル店だと客が少なく商品を独占することができる。


いい店だな。

私が見つけた宝島はほぼ無人島の状態で、しかも見たことのない古今東西の宝が眠っていた。

最高だ。しばらくここにいよう。

宝の解析には時間がかかる。私たちが生きていた時代は何でも簡単に調べられる時代ではない。不便な時代なのだがパッケージに映るわずかな情報から制作会社の規模や、女優の加工具合を分析する作業はとても楽しく何時間でもそこにいることができた。しかし、そんなおいしい状況をほかの仕入れ業者が放っておいてくれるはずもなく一癖も二癖もありそうな奴らが集まってきた。


ちっ。やっぱりこうなったか。
どうする?先に買っちまったほうがいいか?
いや待て。まずは相手の癖を見抜こう。だいたいの商品の場所は暗記している。

一つ、二つと宝が減っていく。

やるなコイツら。
確かあの場所にあったのは「淫・ディ・ジョーンズ」と「水責め24時」。やっぱりアブノーマルだったか。こんな辺鄙な店に来る奴はだいたい特殊性癖だ。
オレは違うけどね。オレが得意なのは熟女系。そこにさえ手を出さなければ許してやるよ。

上手く共存できそうだったので私はこの市場を使い続けることにした。

 



いつものように仕入れに熱中していた時、少々恥ずかしいことが起こった。
客が少ないリサイクル店ではたまに起こることなのだが、閉店間近になると隔離された18禁コーナーに人がいることを気付かず、店員が電気を消してしまったのである。恥ずかしそうに出てきた私だったのだが、もうひとりの人影が見え、ほっと胸をなでおろした。

よかった。オレ以外にも業者がいたか。
とゆうか誰だ?人の気配なんて感じなかったが、、。

そこに現れたのは二十代後半の女であった。

女!?何だこの女!?

ごく稀にだが18禁コーナーに流れ着く女というのは確かにいる。そういう女は罰ゲームもしくは彼氏のために勉強するような勇気を振り絞ってきているもので、羞恥心が全身から溢れ出ており見ているこっちが逆に恥ずかしくなってくる。だがこの女の雰囲気は違う、、。

本物だ。
見ろこの表情。明らかに怒ってやがる。アタシの楽しみ邪魔すんじゃねーよ使えねー店員だなみたいな顔してやがる。
怖えぇ、、。
こんなバケモンと一緒にいたのか。しかも色白でちょっと美人なのが逆に怖えんだよ。

こんな女とは関わりたくないと思った私はすぐさまその場を去ったのだったが、なんと三日後に再会を果たすことになる。



三日間私はあの女のことを考えていた。

たぶんアイツは本物のドSだ。
SM、もしくはBLそれかロリ。どちらにせよ虐める系だ。あの気配の消し方と冷たい目。完全に殺しを楽しんでやがる。あんなの千人に一人くらいの確率だろ。もう店変えよっかな。

そう思った私は買いそびれていた商品を仕入れに行くことにした。すると、、、。

ん?やばい!いる!
あの女だ!先を越された!
しかもあの立っている場所って、、、。

「熟女コーナー」。

何ィーー!!!
そんなバカな、、。
熟女好きの女なんて天文学的な確率だぞ。オマエその女優に親でも殺されたのか?しかもカゴいっぱいに大人買いしてやがる。
ホントなんだコイツ?五つ星ハンターか?

呆然と立ち尽くしていた私に気付いた女がこちらに近づいてくる。

ヤバい!!
逃げなきゃ。マジで殺される。
うわ、、。足が動かない。
終わった、、。「死因:熟死」。

まっ青に怯えている私とのすれ違いざま、彼女はクイッと熟女コーナーへ向かって合図を送りながら去っていった。

えっ?どうゆうこと?

命拾いした私が辿り着いた熟女コーナーでは見事に狙っていた商品だけが抜き取られていた。

そうか、、。わかったぞ。
三日前の彼女は店員に怒っていたんじゃない。いつまでもエリアを独占しているアマチュアのオレに怒っていたんだ。
これがプロのAVレンタルコーディネーターか、、、。
おそろしい。



いかがだったろうか?
これが私たちの生きてきた時代、灼熱の物語である。